「与謝野晶子の生涯を歌で辿る―紫式部を師と仰いで」(2022年10月1日)
元京都市立高校校長 岸本久美子(昭46国)
本講演は、有名な割にそれほど詳しく知られていない与謝野晶子の生涯を、源氏物語からの影響に着目しつつ、たくさんの短歌を朗詠しながら伝記的に語っていくものでした。
古典文学に親しみ、特に紫式部を敬愛して源氏物語を何度も読み込んだ少女時代…。激しい恋愛を体験し、古典を乗り越えた自由で個性的な歌が花開いた20代初期…。17年間に13人の子供を出産し、貧困と結婚生活のストレスに襲われる中、それを跳ね返す創作と仕事に邁進した20代半ば以降…。夫の死後、3度目に取り組んだ源氏物語の現代語訳を完成させ、作家生活を見事にしめくくった晩年…。
暗唱できるほど親しんできた歌でも、それを詠んだ時の晶子がどういう状況であったかを知ると新しい気づきやより深い味わいがある、と感じた方が多かったことと思います。
本講演会の参加者は70人でした。京都は小さめの支部なので、最初の目標は50人。それを大きく上回るご参加を得られたのは、支部会員、近畿地方の各府県や東京・神奈川・栃木・愛知などの桜蔭会員の他、一般の方にもたくさん集まっていただけたからです。オンラインの良さをつくづく感じ、各方面でご協力いただいた皆様に、あらためて感謝申し上げます。
参加者からたくさんの感想を寄せていただきました。一部をご紹介します。
☆先生のお声を通すとその時の晶子の思いが伝わってくるようでした。23歳から64歳まで歌を詠み続けた晶子の人生に思いを馳せることが出来ました。
☆「紫式部を師と仰いで」という副題に興味を持って聴かせていただきました。23歳の処女歌集『みだれ髪』には、源氏物語前半のきらびやかな場面が思い出されるような花や色の歌が多いことに改めて驚きました。また、晩年、与謝野寛亡き後、紫式部も同じ境遇の中で源氏物語を創作したことに励まされた与謝野晶子。そんな生き方や作品からに晶子が紫式部を師と仰いでいたことがよくわかったように思います。
☆和歌にはあまり馴染みがなく、よくわからないと思っていましたが、先生が読んでくださると歌が立ち上がって来るのを感じ、わからないなりになんとなく光景や心情が見えてくるような気が致しました。
☆与謝野晶子の魅力をたっぷり楽しく学ばせて頂きました。仕事のない夫と大勢の子を抱えた厳しい生活苦の中で、情熱的に生き抜いた晶子の実像を、余すところなく知ることができました。岸本さんのよどみない軽妙な語り口に引き込まれ、二回ずつ読んで下さった短歌の朗読の素敵な「調べ」に聞き惚れました。また、決して平坦でなかった晶子の生涯についてのエピソードが面白く、背景を知って聞く短歌からは、そこに込められた深い思いが伝わってきて、一層心に染み入りました。評論が作品の中で最も多いというのは驚きでしたので、評論への好奇心を掻き立てられ、また源氏の現代語訳も読みたくなりました。刺激的な、素晴らしいご講演を有難うございました。オンラインで気軽に聞けたのは嬉しいことでした。
☆Zoomの画面も分かりやすく、着物姿の先生と歌と背景が美しく画面に映像化され、京都支部の方々の技術力に感服でございました。とても贅沢な時間をありがとうございました。
同じ講師による源氏物語の話をもっと聞きたいという御要望も聞こえており、今後の企画のラインアップに入ることになると思います。
手近には、講師が毎月2回ポッドキャストで配信している「岸本久美子源氏講座」がYouTubeで視聴できます。第1章「光源氏の一生を辿る」(全24回)・第2章「紫のゆかりを尋ねて―紫の上の姿を追う」(全12回)・第3章「脇役の男たち」(新配信中、現在まで8回)と、「岸本源氏」の世界を展開しております。講師お気に入りの近代小説の朗読作品とともに、桜蔭会京都支部ホームページの「支部会員の活動紹介」ページにリンクされていますので、そちらもお楽しみください。
これからも皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。(2022.10.8記)
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