一般社団法人桜蔭会

                ―未来へと歩み続ける大学と学園―

2023年5月27日(土)定時総会と同日の午後、Zoomによるオンライン開催で、大学と桜蔭学園からご来賓をお迎えして、懇談会が開かれました。ご来賓の先生方は、お一人3分という短い時間枠の中に、ありったけの情報を盛り込んだお話しを聞かせてくださいました。大学での新しい取り組みを中心に、その一部をご紹介いたします。 

学長 佐々木泰子先生
先日は学部生・大学院生へ奨学金をいただき、授与式には髙﨑会長にもご参加いただきました。ありがとうございました。
藤原葉子先生のご退職に伴い、同窓会担当が、副学長の加藤美砂子先生に変わりました。
昨年の懇談会の後、3つの新しい研究所のキックオフシンポジウムをそれぞれ開催し、多くの方にご参加いただきました。順調に進んでおりますので引き続き力添えいただきたく思います。
大学ではさまざまな集まりも自然に実施できるようになってきておりますので、桜蔭会の皆様とも近いうちに対面でお会いしたいと考えております。

理事・副学長 加藤美砂子先生(総務・理系女性育成・創立150周年事業・同窓会担当)
本学は2025年に創立150周年を迎えます。学内では7つの分科会を作り、記念事業の準備を進めております。昨年度は、創立150周年記念事業シンボルマークを決定いたしました。
https://150th.pr.ocha.ac.jp/news/2022/11/150-1.html
このマークはお茶大の歴史を代表する正門に明治時代の女学生をデザインしています。女子教育の先達として道を切り開いてきた150年、女学生はこれからも全ての人が活躍できる社会の実現を目指しまして未来を指差すという構図になっております。
桜蔭会の皆様とは折に触れて記念事業の準備状況を共有させていただきたいと思っております。

理事・副学長 新井由紀夫先生(教育改革・入試改革・工学系学部設置担当)
コロナウイルス感染対策をした昨年度の状況ですが、一年を通じてクラスターが学内で発生することはなく、授業を実施することができました。今年の4月からは、通常の対面に戻し、入学式等も対面に戻しています。
国立大学は、7年に1回、外部の評価を受けなければいけない、ということになっていて、今年度6月にその認証評価を受ける予定になっています。この認証評価は大学の設置基準と関わっていて、平成30年度以降の大きな教育改革として、「学修者本位の大学教育を実現しなさい」という流れがきています。「学修者本位」とは、学んでいる学生の視点に寄り添った教育を進めなさい、ということで、大学が自分たちの責任でいろいろな改革に取り組まなければなりませんが、それを認証評価でチェックするということになっています。今年度、認証評価機構からいくつか指摘事項がありました。先生によってシラバスにばらつきがあってはいけないし、学生が授業を選ぶためにわかりやすいシラバスを作成しなければならない、あるいは大学院生の研究指導についてもよりクリアな形にし、研究指導計画書を学生と教員で相談して作ってそれに基づいて実施していくなど、いろいろな形で学生にわかりやすい教育改革を進めないといけないということになり、今年度新たにそのような対応をしているという形です。

理事・副学長 石井クンツ昌子先生(研究・国際交流・男女共同参画担当)
今年2月に、本学の同窓生でかつ学長職を努めている7名全員のご参加で女性学長サミットを開催させていただきました。
そして、一昨年度はアジアから来ていた留学生に向けて、昨年度は欧米から来ていた留学生に向けてのオンライン同窓会を開催いたしました。今年度は全世界に向けてという形式でオンライン同窓会を開催する予定です。

理事・副学長 坂元 章先生(評価・学校教育開発支援担当)
附属学校では、教職員の定年延長が決まりました。一般の教諭の先生方につきましては2031年度までに段階的に65歳まで引き上げること、管理職、中でも副校園長の先生方については来年度から一気に65歳に引き上げることとなっております。これまでも一般教諭の先生については60歳を超えても65歳まで再雇用という形で在職可能でしたが、給与が大幅に減額することもあり、続けにくいところがありました。この度、待遇が変わらずに65歳まで勤められるようになりました。

理事 谷 明人先生(新領域開拓担当)
学外理事で、勤務しているJX金属には時おり、お茶大の卒業生が入社してくることがあります。今年、卒業式で見送った卒業生が、2週間後の弊社の入社式に参列していました。大学から巣立つ瞬間と、新しい環境に参加された瞬間、この2つの記念すべき人生の場面に立ち会わせていただき嬉しかったです。

副学長 赤松利恵先生(広報・学術情報担当)
今年度に入り、図書館の利用方法はコロナ前と同様に戻しています。卒業生の皆様も、コロナ前と同様にご利用いただけますので、ぜひ図書館にお越しください。
広報では、年3回学報『Ochadai GAZETTE』を発行しています。先月4月号を発行しました。https://www.ocha.ac.jp/plaza/press/gazette_d/fil/202304.pdf
創立150周年については昨年11月創立記念日に特設サイトを開設いたしました。特設サイトには150のメッセージというコーナーがあり、卒業生からのメッセージを募集しております。https://150th.pr.ocha.ac.jp/news/2023/05/23.html

副学長 太田裕治先生(産学連携・イノベーション担当)
この1月に東京大学との間で協定を結び、研究や教育の相互協力を進めていくことになりました。その一つに、「両校で共同授業をしていこう」というものがあります。これまでの単位互換制度とは違い、もっと簡単な手続きで実施できるようになりました。東大とお茶大で、当該の授業に対し、両校で科目を起こし、その科目をとれば、授業の相互乗り入れができる、という仕組みです。
一つの事例としては、4月から駒場でアントレプレナーシップ関係の授業「ディープテック起業家への招待」というスタートアップを考える授業があり、全部でおよそ100人程度の学生が参加しているのですが、お茶大からは20人弱ほど参加しております。最終日には総長も来られて発表があるので、うちの学生がどのような発表をするか楽しみにしています。本郷でも同じような授業が開講されていて、こちらも10人弱ほどお茶大生が参加しています。アントレプレナーの授業や東大の授業に興味を持っている学生が想像以上に多くて、大変頼もしいことだと思っています。

副学長(事務総括) 福本浩一先生
同窓会館の跡地整備事業詳細というのはこれからになりますが、本学の歴史性をふまえたデザインや、景観をふまえたものを考えていて、創立150周年を象徴するメモリアルな建物、あるいは本学の地域貢献機能の強化をおこなうということで、複合施設を民間事業社から公募する、という形を考えております。

桜蔭学園 理事長・校長 齊藤由紀子先生
4年制から5年制になる時の一番の問題は校地が狭いことでした。それは今も解消されておりませんが、少しずつ本郷の校地を広げ、また、昭和30年代に手に入れたひばりヶ丘のグラウンドや北軽井沢の山荘も大切に使いながら、教育環境の整備を進めております。
私どもが直面しております問題が、本校の西側にある宝生会の能楽堂を含む宝生ハイツが、現在は最高でも8階建てのところを、20階の高層マンションに建て替える計画がある、ということです。https://www.tokyo-np.co.jp/article/205301(東京新聞の記事)
桜蔭学園の教育環境が少しでも守られますよう、まだまだ解決には道は遠いのですが、今も交渉を続けているところです。桜蔭会の方々にも反対署名をたくさんご協力いただきましたことに心より御礼を申し上げます。

この後、会員からの質問に対し、ご担当の先生方から丁寧なお答えをいただきました。抜粋してご紹介します。

Q同窓会の支部として、中学生高校生対象にお茶大の教育の良さを伝える企画ができないかと考えております。
・大学としてはどのように未来のお茶大生に対して情報発信をしているのでしょうか?
・支部の中で何か企画するときに、大学側から利用させていただけるものはあるのでしょうか?

A新井副学長:地方の学生さんがバスで見学にいらした際には、広報担当赤松先生中心に、学生をアンバサダーにして、高校生にわかりやすいような説明をして寄り添っていこうと考えています。今回、共創工学部ができますので、それについて高校の先生たちにアピールするものを検討しています。

A加藤副学長:理系女性育成啓発研究所で、日本の理系女性人材の裾野を広げるために女子中高生に理系に興味を持ってもらうような活動をしています。月に2、3回、地方に住んでいる中高生向けに、本学の理系の卒業生から、理系進学の理由や、中高大学時代に何をしたか、現在どのような仕事をしているのかなど話していただき、理系分野に興味を持ってもらうという活動を行なっています。今後、私どもから地方に出かけていき、理系への進路選択の支援などもしていきたいと思っております。

Q桜蔭会に今後どのようなことを期待していらっしゃいますか?

A佐々木学長:できる限り大学サポーターを増やしていきたいと思っております。沢山の後輩が桜蔭会員になってくれるようにできる限り努めていきたいと思っています。若いパワーを勧誘して、大学と桜蔭会が共に発展していけたらと願っております。

Q共創工学部が高校生の心に刺さるには、どんな工夫をしていらっしゃいますか?

A新井副学長:共創工学部は昔の機械工学とは違うので、一部先生方には反発を受ける表現ですが、女性の感性を生かす、女性ならではの発想を生かし、データサイエンスを活用して共に新しい社会を創っていくための工学であるという特徴があります。また、文系の人も入れる、数Ⅲをとっていなくても入れる学部として、文化情報工学、すなわち文化の情報を扱う工学であるということをアピールしております。これは、社会の経済系のデータサイエンス学部とは一線を画しているのですが、なかなか高校の先生や高校生にイメージしていただけるかが問題です。

質問者:学校現場を知る者としては、保護者が足を引っ張る場合が多いと感じます。機械系、油まみれの工学部というイメージが、特に地方では足を引っ張ることが多いです。これから桜蔭会でもそのようなイメージを拭っていけたらと思います。

全部をご紹介できないのが残念ですが、未来へ向けての大学の挑戦に目を見張る思いでした。今後の母校のますますのご発展を心からお祈りしております。
先生方には貴重なお時間を、ありがとうございました。