数学科同窓会主催のセミナーが7月29,30日の両日に大学構内の教室において開かれました。本セミナーは「卒業後も学びの場を残す」ことを掲げて、数学教室のご協力のもと毎年開催しています。ここ数年はコロナ禍のためオンラインでの開催でしたが、今年は久しぶりに対面でも開催することができました。

今回は、本学数学科教授の萩田真理子先生(H9院修数)をお迎えし、「暗号を作ろう 〜代数の応用としての暗号の作成と解読〜」というテーマで、ネットワーク社会に欠かせない技術である暗号や電子署名、そしてそれらの技術を支える素数判定や擬似乱数について学びました。

最初に古典的なシーザー暗号について説明があり、グループで暗号を作成し、それを他のグループと交換して解読を試みるという実習を行いました。

現在よく使われている暗号は共有鍵暗号ですが、この暗号のみでは安全な通信が保証されないため、公開鍵暗号という暗号も利用されています。公開鍵暗号で有名なRSA暗号は、代数学のオイラーの定理と、「2つの大きな素数が与えられたとき、その積を求めることは簡単にできますが、逆に積が与えられたとき2つの素数に分解することはほぼ不可能である」という事実が基になっています(図)。

その際必要となる大きな素数の作り方と素数判定の方法についての説明もありました。そして、実際にRSA暗号を作成して解読するという計算の実習を通して、その仕組みについて理解を深めることができました。

最後に、日本の研究者が開発した擬似乱数と、先生ご自身が開発された暗号乱数の紹介があり、代数学の理論が現在のセキュリティー技術に応用されていることを実感しました。


参加者は22名(対面11名、オンライン11名)でした。来年も多くの方々のご参加をお待ちしております。(浅野・小林)